ぽンすけ。ブログ

主に闘病記。タイトル【欠陥品】は病気の発症とされる時期(生い立ち)について。毎月末に【月詠み】として1ヶ月の軌跡をまとめています。他は思ったこと、言えないこと、言いきれない想いを綴ってます/⚠閲覧は自己責任

崩壊①

 

 

10年前。

私が社員として勤めていた店に

アルバイトで入ってきた野郎。

 

私は後輩として。

社員として。

そいつと関わり始めて。

 

マサヤと付き合ってた私にとっては

『ただの、後輩』でしかなかった。

 

当時、野郎にも彼女がいて

その相談にも乗っていた。

 

同じく、野郎の高校の同級生の1人が

アルバイトとして入ってきて、

それが派生して

とある高校の後輩たちと

一気に知り合うことになった。

 

 

元カノを忘れられない子。

初恋の人を自殺で亡くした子。

頭のいい兄と比べられ劣等感で埋もれた子。

 

みんながみんな、

それぞれの悩みを持ち、

たった3つしか歳は変わらないのに

 

みんながみんな、

私を頼ってくれた。

 

それは彼らが高校を卒業して

社会人になっても変わらなかった。

 

『姉さん、どうしたらいいすか?』

 

そんなメールが来れば

すっ飛んで行った。

 

たまたま野郎が親元から離れ

一人暮らしをしていた近くに

新店舗が出来て

私はそこに異動になった。

 

 

その頃には私はminatoを失い、

新店舗異動と共に

マサヤから離れていた。

 

いつしか、野郎の家に

彼らが集まるようになった。

私も。

家に帰りたくなくてそこに立ち寄った。

 

その頃から

彼女と別れた野郎から

猛アタックされ始めた。

 

いや。

 

マサヤと付き合ってた頃から

猛アタックされていた。

 

 

1度だけ、

マサヤに「やり直そう」

そう言われたことがある。

 

「そんなガキらとつるむな」と。

「お前のことは誰が救うんだ」と。

 

「俺にもminatoのことを背負わせてくれ」

 

そうマサヤは言った。

 

 

けど。

 

 

私は『頼られている』ということに

存在意味を見出していた。

 

『こいつらの壁にならなきゃ』と。

 

 

まだ社会に出たばかりで

悩み、苦しみ、足掻く彼らを

放ってはおけなかった。

 

 

そんな無責任なことは出来ない。

 

マサヤに頼ってきた。守られてきた。

 

でも。

 

 

もう守られるのは嫌だ。

minatoを守れなかった私が。

守られるなんて、耐えられない。

 

 

当時の私はそう虚勢を張った。

 

 

 

マサヤからの連絡を断ち

遮断した。

 

 

そして。

 

大学生になった、もう1人の

元アルバイトの子と付き合った。

 

野郎ではない。

 

 

春休みで地元に帰ってきていた彼。

そして。震災。

 

 

店舗も落ち着き、

あらぬ濡れ衣を着させられ、

母に毎日殴られていた私は。

 

 

彼が埼玉の大学に戻ると一緒に。

彼が住む埼玉へ逃げた。

 

 

気づいたら

親と揉めたと言って

野郎も埼玉に来た。

 

 

祖母が亡くなり

茨城へ帰る私と一緒に

野郎も埼玉を去り実家に戻った。

 

 

茨城に戻ってもしばらく

埼玉の彼とは続いていたが、

突然「別れたいと思ってる」という

一方的な思いを告げられ

そのまま終止符を打った。

 

私はその埼玉で出会い、

私を慕い、

私の作るご飯を毎日のように食べに来て

つまみ食いばかりして。

彼は言わない「美味しい」を言ってくれて

お弁当まで作って渡していたほど

密かに好きな人がいた。

 

 

思いを告げる資格はない。

 

 

そう思い

新しい仕事にのめり込んだ。

 

 

野郎とも1年くらい

連絡は取らなかった。

 

 

密かに想っていた人は

内定が決まり

配属先が兵庫に決まったと

連絡が来た。

 

 

その頃の私には

遠すぎる距離だった。

 

想いを告げないでいよう。

 

そう決めて

応援することを選んだ。

 

 

仕事も落ち着いて来た頃、

野郎から突然連絡があった。

 

「仕事を手伝ってほしい」と。

 

 

私は息抜き代わりに

野郎の仕事(エアコン&アンテナ取付)を

手伝うようになった。

 

 

報酬はパチンコ。

勝ち分は私が貰う。

当時、母に給料を差し押さえられ、

500円しかもらってなかった私にとっては

いいお小遣い稼ぎだった。

 

 

お客様と話すのも楽しかった。

 

 

アンテナ取付を目の当たりにしたときは

私の仕事にも役立つ知識を得た。

 

テレビアンテナのデメリット。

これはフレッツ光を販売する側として

同時にアンテナ不要の

フレッツテレビを紹介する、

いい知識になる。

 

 

私は実際に現場を見ている。

 

エアコン取付のお宅で

ネット配線のことも

相談されたこともある。

 

 

現場に行けない、

テレフォンアドバイザーの私。

現場を知ることは貴重な経験。

今まで絵でしか説明を受けなかった、

一軒家の構図や仕組みが

立体的になっていく。

 

 

私はそれを活かして

グングンとアドバイザーとしての

地位を確立していった。

 

 

野郎からの猛アタックも再発。

 

 

でも。

 

 

私には好きな人がいる。

 

 

こんなに長年関わっていても

野郎は『後輩』でしかなかった。

 

気持ちに応えることはなかった。

 

 

その関係が4年。

NTTにいる間、続いた。

 

 

兵庫にいる人への想いに蓋をして。

 

 

職場を駆けずり回っていた私は

社内人気NO.1の人と仲良くなった。

当初は嫌いで仕方なかった。

 

【人気NO.1】

厄介なことに巻き込まれるからだ。

所謂チャラ男みたいな頭。

だが声は小さくて

何を言ってるんだか分からない。

 

お坊ちゃまで

高級車を乗り回す。

 

 

THE苦手。

 

 

入社して3年経っても

ほとんど話さなかった。

喫煙所で挨拶する程度。

 

ガラッと変わったのは

仲良くしていた他の男性社員がキッカケ。

 

いつものように喫煙所で話をして

スマホゲームの話をしていた。

 

 

ある日

「このゲーム一緒にやろーぜ!」

そう言われた。

隣には苦手なその人。

 

『何のゲームっすか?』

隣の彼には視線を合わさず

仲良い人にだけ話しかける。

 

グランブルーファンタジー

 

ボソッと。

苦手なその人が言った。

 

 

『あぁ…。とっくにやってますよ』

 

敢えてすごく嫌味な言い方をした。

苦手な故に。

 

私は配信開始とほぼ同時に

1人でそのゲームを楽しんでいたのだ。

声優が豪華でストーリーが

気になって仕方なかったからだ。

 

 

「早く言えよ!騎空団作ったんだ!」

仲良い社員がそう言った。

苦手な彼を見る。

 

すると、

キラキラした眼差しを向けられていた。

 

(ありゃ…そんな目で見るなよ…)

 

『………入るよ』

 

 

根負けした私がそう言うと

苦手な彼が1番喜んでいた。

 

それからは

仕事終わりや休憩中に

喫煙所に集まり

一緒にゲームをした。

 

 

ひょうきん者で

「人と関わるのが面倒だから」と

偽りの姿で仕事をしていることを知った。

 

(クールぶってるのはそういうことか)

 

所謂チャラ男みたいな頭にしてるのは

「くせっ毛を誤魔化してるだけ」

Acid Black Cherryのヤスが好きだから」

 

『ヤス!?私も好きだよ!』

 

 

彼を知っていくことは楽しかった。

 

「あの車、ようやくローン組めたんだ」

「ずっと憧れてて。」

 

(親のお金じゃなかったのか…)

 

「アニソンは神曲ばっかりなのに」

「分かってもらえない」

 

コードギアスルルーシュ知ってる?」

「コスプレするときある。内緒ね。」

「見てほしいアニメがあるんだけど…」

 

 

いつの間にかゲームの話ではなく、

〈苦手なタイプ〉ではなく、

〈趣味の合う、ただただ不器用な人〉と

私の中で印象が変わっていった。

 

 

具体的に告白をされたわけでもなく

告白をしたわけでもなく。

2人でいる時間がただ増えていった。

 

電車通勤の私を

家まで車で送ってくれたり。

 

 

噂が立たぬよう

少し離れた場所で合流して

一緒に帰る。

 

職場でも

仕事の話をしてるのに

耳まで赤くなってる彼が可愛かった。

 

 

コピー機に一緒に並び

『今日遅くなる』と私が言うと

「一旦帰ってから迎えに来る」と、

お互い照れながら話をしたり。

 

 

【付き合う】

…という関係を確立してしまうと、

【彼氏はこうあるべき】

【彼女はこうあるべき】という

誰が決めたかも分からないものに

縛られていく。

 

お互いの意見は一致した。

 

【両想い】

【一緒にいたい】

それでいいと。

 

 

敢えて、そうした。

 

 

 

だが。

 

 

母に隠れて居酒屋でバイトしていたのだが

ポケットに入れていたスマホ

母からの着信を

何らかの動作で電話に出てしまっていた。

 

それに気づいた時には

〈通話時間7分〉と

話し続けていることになっていた。

 

慌てて電話を切る。

 

 

青ざめた私を見た居酒屋のオーナーが

気づいて早退を許してくれた。

 

 

バイト先から家まで

1時間はかかる。

 

 

絶対。

 

母は私の住むアパートに向かってる。

 

 

私は彼に電話した。

 

 

彼は物凄い勢いで駆けつけてくれた。

 

 

彼には私の家庭事情を

詳しくは話していなかった。

 

 

仕方なく、

家に向かい焦る自分を押さえつけ

彼に家庭事情を話した。

 

 

彼の顔色が変わる。

 

 

「お母さんとは、俺が話す」

「俺といた事にすればいい」

 

 

そう言った。

 

 

私の住むアパートの近くのコンビニで

彼との押し問答が始まった。

 

 

母に勝てるわけがない。

彼に背負わせるわけにいかない。

 

 

でも彼は私よりも頑固。

1度決めたら誰にも止められない。

 

 

パニックになる私を落ち着かせながら

「俺が言うから。大丈夫だから。」

「お母さんに電話して?」

 

彼は私の手をずっと握ったまま

私は母に電話をする。

 

母の怒鳴り声が車内に響く。

「会社の人と一緒にいて…」

 

恐る恐る私は言う。

 

母の怒鳴り声は大きくなる。

 

私の震えは止まらない。

 

 

彼はそんな私の手を強く握り

スマホを渡すよう手を差し出した。

 

 

震える手で彼にスマホを渡す。

 

 

彼は母に「初めまして」

そう切り出す。

「交際を申し込んでいました」と。

怒鳴る母に彼は

「すみませんが、話を聞いて頂けませんか」

と。聞いたことも無い冷酷な声で言った。

 

「怒鳴ってても話になりませんから」と。

 

 

その日をキッカケに

私たちが敢えて選択しなかった、

【彼氏彼女】という名に縛られた。

 

彼は母と闘い続ける。

 

その度に

後日母が私のアパートに乗り込んできて

部屋を荒らして

私を殴り倒して帰っていく。

 

彼は仕事を早退してまで

私のところまで駆けつけてくれた。

 

 

彼はガンダムが大好きで

お台場のガンダムフェアに

行きたいと言っていたのを

聞き逃さなかった私は、

密かにバイト代でそのチケットを買った。

 

 

彼は喜んだ。

近くにあるプラネタリウムにも行こうと

彼は言った。

私の好きなものも聴き逃してなかったのだ。

 

 

ただ、彼は

「お母さんに言おう。出掛けること。」

そう言った。

 

私は猛反対した。

認めてもらえる訳が無い。

 

でも彼は。

「お母さんの許可を貰って堂々と行こう」

そう言った。

 

コソコソしたくないと。

 

「ダメな時は俺が言う。でもまずは。」

と、私の口から言うことを条件にした。

 

私も逃げるのではなく

闘えという意味だ。

 

私は母に言った。

 

案の定

反対され殴られた。

 

でも。

私は引き下がらなかった。

 

ガンダムフェアだけでもいいから』と。

『彼が好きなものを見せてあげたい』と。

 

母もガンダムファン。

 

ガンダムだけならいいと、

許しを得た。

 

 

それが

最初で最後の

遠出のデートだった。

 

 

彼はファミレスで母と会い、

【結婚】の話をした。

 

私はそこまで彼が考えてるとは

知らなかった。

 

嬉しかった。

 

 

でも。

 

 

母は許さなかった。

 

 

これまで闘い続けてくれた彼の心は遂に

ポッキリ、折れてしまった。

 

 

【自然消滅】

 

 

職場でただ、

すれ違う2人に戻った。

 

 

私の心も。折れてしまった。

 

 

母の元にいる限り

私は好きな人を不幸にする。

 

 

そう思った。

 

 

それまで身を潜めていた野郎が

また顔を出す。

 

 

「別れた?俺にしろよ。」と。

 

 

何も響かない。

 

お前は『後輩』だ。

 

どこまでも諦めが悪い奴だ。

 

こんな私のどこがいいんだ。

 

 

野郎を拒絶した。

 

 

そして。

母と縁を切ることを選択した。

 

 

もう私の人生に

入り込んで欲しくなった。

 

 

何も失いたくない。

 

 

 

密かに新しいアパートを決め

密かに車のローンを組み

密かに警察署と役所へ行き

〈住民票非公開〉

市からDVの保護を受けることにした。

 

そして。独立。

 

同時に心療内科の門を叩いた。

 

 

そこからは

ご存知の通りだ。

 

 

薬の副作用に負け、

出社も困難になり

上司もあらゆる手を尽くしてくれたが

本社が下した決断は

【契約満了時、次回更新無し】

 

円満解雇だ。

 

 

そこにつけ込んだのが

野郎だった。