私から私へ
奥にひとつ、3畳の部屋
いつも暗かった
いつだって私しかいないその檻
濡れた髪を撫でる優しい母の手を
いつまでも待っていた
偽りの優しさだと知っていても
届かなかった声
小さな窓
走り回る子供たちの笑顔
いつだって眩しくて
届かない向こう側に手を伸ばしていた
置いてきた小さな手
今でも空に伸ばすその手を
今は
飛び出そう
その暗闇を越えていけ
走れるよ
あの頃の子供たちのように
届かなかった壊せなかったその檻は
私が壊すよ
あの頃の私へ
もう…待たなくていいよ
角にひとつ、6畳の部屋
いつも逃げ込んだ
息を潜めていれば生きていけると
広くなった、景色が変わっても檻の中
笑顔の仮面を描いた
偽りの「家族」を演じるために
叶わなかった願い
温かいご飯
家々に灯る優しい光たち
いつだって眩しくて
涙の数だけ赤い証を刻んで笑った
置いてきたんだ
下手くそな笑顔を被った私を
今なら
笑っていいんだ
その仮面を外してあげよう
走れるさ
何も知らなかったときのように
叶わなかった、壊された本物の私を
ちゃんと見つけたから
あの頃の私へ
もう…泣いていいよ
ありがとう
連れていけなくてごめんね
行かなくちゃ
あなた達が立ち上がれるように
その檻から出られるように
そんなことしか出来ないけれど
置いていくんじゃない
託していくよ
また会いに来てくれるかな?
あの頃の私へ
「生きてくれてありがとう」
ーPoNskー